Cold Days (1/2)
「ティア、エビも獲った事だし、そろそろ帰るだろう?」
海の幸をゲットして、海から上がり、我々が砂浜に戻って来た時に、お父様が帰還を促そうとして来られた。 濡れた前髪を片手でかき上げる仕草がセクシーかつ、男前で絵になる! 素早く宝珠を握り込む。
「まだ夕陽に照らされる海を撮影出来ていません。個人的には朝日より夕陽の方が綺麗だと思うのですよ。金色に輝いてる海が。前回は魔物のせいで禍々しい気配でしたが、今は浄化後なので」
「じゃあ、夕陽を撮影出来たら帰るんだな?」
「はい。でも、何ならお父様は転移陣で一瞬帰ってお母様を連れて来て下さいませんか?淡い色のふわりとしたワンピースドレスを着せて」
「シルヴィアと夕陽を撮影したいのか?」「お母様とお父様が夕陽に照らされる海を背景にして砂浜を歩く姿を撮影したいです」
「……確かに浄化後だし、今からなら良いかもしれないな。分かった」
お父様は優しく微笑み、ちゃんと騎士の側にいるんだぞと言い残して神殿の転移陣に向かった。
「神殿に向かった辺境伯に聞いたが、まだ夕刻まではここにとどまるのだな?」
陽光に輝く海を背景に、リナルドを頭の上に乗せたまま、水着のラナンやライリーの男性騎士二人を撮影していたら、殿下に声をかけられた。
「はい、ギルバート殿下。ところで、鮫の魔物の死体がありませんね?」
私は今更に、周囲を見渡して鮫の魔物の死体が無くなっているのに気が付いたのだ。
「まさか、あれも食べたかったのか?寝る前に指示を出して全部夜のうちに燃やして聖水をかけて浄化させたぞ」
「鮫は別に美味しそうには見えなかったので、大丈夫です。昨夜のうちに仕事してくれていたのですね」
「死体を放置しておいてもろくな事にならないからな」『賢明な判断だね』
私の頭上でリナルドが言った。
「ところでリナルドはそんなところで暑くないの?」『大丈夫』
まさか自ら帽子の代わりになってくれているのだろうか? 別に麦わら帽子をインベントリから出しても良いのだけれど。
「ところで昼食はどうするのだ?」
「お父様がお母様を連れて来て下さったら、この海辺であの大きなエビを焼いて食べようかと。シンプルに塩で焼いた物と、お刺身と、採れたてワカメの酢の物とエビをお味噌汁に入れて、後はご飯……いえ、ファイバスのおにぎりなどを」
「亜空間収納から調理道具だけでも出しておくのはどうですか?」
さっきまで撮影モデルになっていたローウェが声をかけて来た。
「そうね、そろそろお昼の準備はしておきましょう」
インベントリから複数のBBQセット等を砂浜に出して、日除けのパラソルも突き刺し、ビーチチェアも設置した。
リナルドは私の頭の上から飛び立って、ビーチパラソルの下に置いたテーブルの上に移動してまったりしてる。
「火をおこしておきましょうか?」「ありがとう、エイデンさん」
火起こしを殿下の側近に任せた。火の精霊の加護持ちだからサクッと魔力で着火した。
私はまだ動いている新鮮なエビを用意して、作業台の前に立つ。
「えーと、エビを氷締めにしてスプーンで頭を外す……誰か私の作業手順を見て覚えてくれるかしら?」
魔物討伐後にほぼ先に帰還してるけど、残ってる騎士の人数がまだ15人位いる。 鍋を二つくらい用意するので手を借りたい。
「「はい!!」」「私もやろう」「ギルバート殿下まで。ありがとうございます」
周囲にいる殿下と騎士達が頭を外す作業を手伝ってくれるようだ。
「頭を引っ張ると、頭と一緒に背ワタも取れます」「「おお……」」「出来た!」「私も出来ました!」
頭を半分に切る。 黄色いミソが詰まっている。 出汁入り味噌汁に入れ、しばらく煮込む。
「レザーク。しばらく煮込むけど、エビのヒゲに火が付きやすいので注意して見ててくれる?」「かしこまりました」
「我が君、私も何かお手伝いをしましょうか?」「ラナンはそこのビーチチェアに横になって、ちょい撮影するから」「横になれば良いのですね。分かりました」
私は宝珠を握り込んで色んな角度でラナンを見て、撮影した。 アイドルのグラビア撮影みたいで楽しい。
「セレスティアナ様、お味噌汁は完成したかもしれません」